Q15:学習・研究の進め方で良い方法などはありますか?
これは正直回答が難しいです。誰にでも当てはまる標準的な方法というのはあるのかもしれませんが。ただ、最近気づいたのですが、英語は言語運用能力を高める上で「読む」「書く」「聞く」「話す」を繰り返すことが重要といっていますね。また、私は教育分野では齋藤孝先生、英語では大西泰斗先生の方法が大変良いと思っています。言語のイメージを持つ、ボキャブラリーを増やす、かっこいいフレーズは覚える、真似て喋る、など、様々に共通しているワードがあるな、と思っています。日本語を話す能力を高めるには、聞く、読む、書く、という3つの能力も同時に鍛えていくことが大事になります。知っている話題・内容、真似したい用語・フレーズをたくさん身につけて、それを普段の自分の生活の中で使っていく(使いこなしていく)ことが自分の知的能力を高める近道ということでしょうか。それにはインプット(読む、聞く)とアウトプット(書く、話す)を繰り返すしかないのでしょうね。ただし、近道といっても毎日成長するという類のものではありません。やはり継続することで初めて力になります(筋トレと同じ)。
以下、おすすめの方法を示しますね。ただし、お願いしたいことはやり始めたら、最低でも3ヶ月はしてください。でないと効果は出てきません。
1)毎日、できるだけ決まった時間に決まったことをする(時間は30分、1時間など少しまとまった時間を取る)。
これは新聞をぼおっと眺める、本・論文(社会的な話題に関するものに限定など、自分なりに縛りをかける)を読む、ドキュメンタリー番組や映画を見る。
→筋トレと同じで、学習を繰り返して体幹にしていくことが大事。なお実施場所は自由(通学、朝起きてから、お風呂場でなど)。ただしルールとして、スマホの電源は切るか気にならない場所に置く(ついつい手に取ってしまう)、掃除はしない・・・これらは大敵。
2)その日やったこと、考えたことをメモする
→今日の発見、アイデアを書き留める、程度で良いです。
もちろん、決まった時間以外にさらに色々するのは自由。だけど、絶対に破らない「自分ルール」を作ってください。
それと学習の仕方自体を学習するということもあります。
例えばこんな本
①宮内泰介・上田昌文(2020)『実践 自分で調べる技術』岩波新書。
②加藤周一(2000)『読書術』岩波現代文庫。
③澤田明夫(1977)『論文の書き方』講談社学術文庫。
④斎藤孝(2005)『三色ボールペンで読む日本語』角川文庫。
*世の中には勉強の仕方、調べ方などの本はいろいろあります。自分に適したやり方が見つかるまではまずは真似をしてみる。最初から自己流(とりあえずネットで調べて終わり)は泳ぎ方を習わずにプールや海に行って泳ぐようなもの。効率よく技を習得するには、達人から教わる(漫画でもよくある修行のシーン)。それと同じことを皆さんもやっては?(気分は炭治郎・善逸・伊之助?)
Q16:学習・研究を継続する自信がありません。
「継続」が日常になる(その活動がご飯を食べる、歯磨きをするレベルになる)までには時間がかかります。それと「継続」を目的とすると結果的に続きません。やはり小さなものでも良いので、目標を持つこと、目標を達成すること(達成感を得る)を繰り返すことが大事なんだと思います。例えば、「筋肉をつけるぞ」は目的ではありませんね。何かをするために筋肉をつけるなんです(以前に息子と見た「妖怪ウォッチ」では主人公はヒロインの子にモテるために筋肉をつけていました・・・勘違いですぐに辞めていましたが)。であれば学習・研究は何のためにするか。その小さな目標(最低でも3ヶ月続く目標)を設定したら良いのだと思います。3ヶ月後自分はどうなっていたいか、4ヶ月後にある大きなイベント(例えばプレゼン大会、インターン研修、論文大会など)に向けて自分はどんなコンディションでいたいか、など何かしら具体的なイメージを描くことが大事なのだと思います(たとえば、『鬼滅の刃』の竈門炭治郎は、禰津子を人間に戻すという大きな目標を掲げていますが、都度都度で目標を発見・設定していますね(呼吸法の体得、火の呼吸に耐える体力づくり、柱の修行のクリアーなど)。そして、その成果を鬼との戦いで発揮し、さらに課題を発見し、目標を設定するを繰り返しています)。大きな目標を原動力に、その達成のために小さな目標の設定と達成を繰り返す。良い事例だと思います。
ちなみにこの関連で面白い本がありました。
伊藤亜沙(2022)『体はゆく できるを科学する』文藝春秋。
Q16:自分に関心のある文献・論文等の検索方法を教えてください。
色々な方法がありますが、まずは各種図書館で調べ方を紹介しているサイトを見ることをお勧めします。
リサーチナビ(国立国会図書館):https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/guide.php
コンテンツを調べる(立命館大学図書館):http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/jl/jci/page2.htm
ただし、検索で大事なことは、ヒットする「言語」(ワードバンク)を増やすことです。 例えば、現在のプラスチック問題について理解を深めたい、といった場合、「プラスチック」と検索すると、関係のないものまで膨大なものが出てきてしまいます。他方で「プラスチック」「問題」と入れても、何の問題を取り扱っているかわからないものまで出てきます。これは生成系AIを使っても似たような問題が生じます。最初からネット検索でいくとこんな感じになります。なので、おすすめの方法としては3つです。
1)大きな本屋に行って、自分のキーワードに関連する棚を見て、どんなワードが自分の関心のあるテーマには 使われているかを調べる
2)実際に本を一つ買って、使われている重要ワードをメモする。
→できれば新書の方が良いです(お値段が安め)。
新書マップ:https://shinshomap.info/
3)AMAZONのレビュー機能も活用する。
何回か自分の気になるワードを入れ続けて検索すると、AMAZONのAIが分析して、「この人の関心に近い人はこんな本を買っていることが多い」ということでおすすめ本を勝手に紹介してくれます。もちろんハズレもありますが、意外に当たる時もあります(リアル本屋とは違う活用法)。
こういうことを繰り返していくと、自分の関心のある分野で使われている「言語」が増えて検索の精度が上がります(重要な人物名、組織・企業名、よく使われている専門用語、情報が集まっているURLや雑誌など。例えばですが、プラスチックの場合、ケミカルリサイクル、メカニカルリサイクル、資源自立経済戦略、サーキュラー・エコノミー、PPWR、INC、デポジット、エレン・マッカーサー財団などの言葉が関わります)。いきなりネット検索はうまくいけば良いですが、インターネットは情報の海、情報のゴミ屋敷、最近は意図的に整理された情報の束(思考の偏りを助長する可能性)。自分のスタイルは複数のソースから身につけることが大事ですね。
Q17:生成系AIについてゼミではどのように活用しますか?
技術系のゼミだから生成系AIは即奨励します、と考える方もいらっしゃると思いますが、私は違う立場です。生成系AIが知的活動を支える新たな手段として期待できるものだとは考えていますし、実際私も調査等をする際には活用しています(とりあえず知りたいことの最初の段階での情報の確保、明確な目的がある中での情報の探索にはある程度有効かと思います)。ただ「道具を活用すること」と、「道具に振り回されること」とは違うとも考えています。
おそらく一般的な生活を送る上では生成系AIは電子レンジ、全自動洗濯機のように「時間を効率的に活用することが可能な便利な道具」(ドラえもん?)ということで良いのかとは思います(ただ従来の検索よりも50倍以上も電力消費量が多いとされる生成系AIを使う必要が生活シーンのどこにあるのかは疑問ですが・・・)。
他方で、繰り返しになりますが、大学での学びで大事なことは、①「知的なアンテナ」の感度(別の言い方をすれば知的なセンス)を高めること、②論理的な思考、論理的な説明に必要な手立ての理解と実践、これらに基づく論理的な説明能力を身につけること、③単に情報を頭に入れるのではなく、その情報の文化・歴史等のバックグラウンドを自身の知的基盤に取り込むこと、④以上を通じて、自分の得た知見を実際に自在に運用すること(この場合は自分の新しい展開に活用できること)、です。その点で、いつまで経っても生成AIに質問を投げかけて、その答え通りに行動しているだけでは、「その人であることで生まれる独自性」は発揮されません(これが「道具に振り回されている状態」)。また生成系AIを活用するにしても、ポイントとなるのは「何を調べさせるのか」「何をどのように聞くと、有益な結果が得られるのか」「生成系AIの回答の真偽をチェックできるか」というセンスが重要になります。でそのセンスはどのように鍛えるのか。こうなると生成系AI自体の学習もそうですが、生成系AIという手段を活用する側である皆さんの能力形成が重要になってきます。結局は普段から知的関心を広げる癖と体づくり。そのためのヒントはQ15、Q16に記載したので、ご覧ください。